世界で最も上質の革を生産する所として有名なイタリアのボローニャでは、年に2回、イタリア・タンナーズ協会主催の展示会が行われている。ある年、展示会場の一角に、日本製のバッグが登場した。その作りの緻密さ、美しさに、会場を訪れた人々は誰もが嘆息。「これほどまで素晴らしいバッグは、ヨーロッパ中を探しても出会えないだろう」と賞賛を浴びた。フィレンツェの郊外、サンタ・クローチェという街のタンナー(革のなめしメーカー)によって、十世紀にわたって受け継がれてきたバケッタ製法の革を使った手作り製品。それこそが大峽製鞄のバッグだった。
日本人は手先の器用さと仕事の丁寧さにかけては昔から定評がある。大峽製鞄のバッグにも日本独自の手造り技術が随所に見られ、そのいずれもがヨーロッパでは真似のできない技ばかりであった。
たとえば、革の断面は小刀で裁断し、鉋をかけ、布海苔を塗って磨く。その仕上がりの美しさは、ヨーロッパ式のヤスリ式と比べて格段に違う。また、裁断面を合わせて革で巻き込む「へり返し」も、へりの幅が均等でピタリとなじむ。さらに、へりの部分を革になじませるために、熱コテで溝を入れる「焼き念」を引く技術を守り続けている。へり返しを精緻に合わせて仕上げる日本独自の「へり返し合わせ」も活用している。なかでも優れているのは、仕上がりの美しさを左右する重要な工程である「目打ち」技術だ。職人の勘だけを頼りに寸分違わぬ幅でミシン目が打たれていく様は、まさに職人技なのである。
(講談社「男の一流品大図鑑2001」より)
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